拙稿「破産法六一条考」は、典型的な相場変動商品であるデリバティブ取引がその一方当事者の破産宣告による清算の効果は破産法六一条から当然に帰結されること、相手方当事者を破産管財人による破産法59条の解除・履行の選択権行使により不当に不安定にすることから保護する同条の趣旨は、会社更生手続にも妥当すること、一括清算条項は破産法104条2・号4号、会社更生法163条2・4号によりその合法性が承認されることを論証し、金融機関を一方当事者とするデリバティブ取引を規律する「金融機関等が行う特定金融取引の一括清算に関する法律」(平成10年法108)は本来不要だったことを論じた。本稿は近い将来の倒産実体法の改正に少なからず寄与したものと自負する。また、拙稿「利害関係人の手続関与のあり方」においては、新会社更生法が導入した代理委員の選定命令と「金融機関等の更生手続の特例に関する法律」(平成8本法95)における預金保険機構等の預金者の代理権との制度趣旨の比較を行い、また、更生手続によらない営業譲渡に関する株主の処遇を民事再生法における再生計画によらない営業譲渡の場合と比較し、両者の相違の合理性を検討したものである。後者は、営業譲渡が主な再建処理策として想定される銀行の経営破綻に際し、金融整理管財人による管理と並行して、裁判所による再建型倒産手続を行うとして、更生手続と再生手続のいずれを選択するかに関わる問題である。また、『民事救済手続法〔第二版〕』の第10章(「特殊法人の破産能力」)において、民事再生法の制定が特殊法人の破産能力論に与える影響につき否定的な立場を示した。
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