1 これまで社会から放置されていたという意味で潜在的被害であるハンセン病患者が提訴した訴訟に関する初めての判決である熊本地裁判決の意義を、立法不作為論、除斥期間論を中心に検討し、また戦後補償訴訟との対比でその射程距離を検討し、幾つかの論稿を発表した。 2 潜在的な総合被害である戦争被害につき、訪独し、ナチス時代の強制収容所や関連図書施設などを調査した、戦後補償問題の日独の比較研究をし、日本ドイツ学会で発表し(6月)、その成果を学会誌に公表した、また、2002年1月には、福岡の強制連行訴訟につき原告側弁護団にヒアリングをし、東京で行われた戦後補償訴訟フオーラムに参加して情報、資料を収集した。 3 潜在的被害のひとつであるセクシュアル・ハラスメントの問題について、大学の教育研究環境配慮義務の視角から検討を加え、5月に法社会学会ミニシンポジウムで報告するとともに、大学の紀要に論稿を発表した。 4 潜在的財産被害である欠陥住宅被害の問題につき、欠陥住宅全国被害者連絡協議会に出席し(5月秋田、11月横浜)、情報・資料を収集し、また欠陥住宅被害の損害論に関する論稿を発表した。 5 潜在的健康被害である水俣病などの健康被害をめぐる公害健康被害救済制度について歴史的検討をし、課題を析出した論稿を発表した(講座社会保障法6)。また熊本の水俣病資料館を訪れ、資料収集をした。 6 潜在的健康被害であるじん肺訴訟に関して重要判決が相次いだので、当該原告側弁護団と研究会を持ち、判決の意義と課題について検討した(2002年1月福岡、東京)。その成果は、本年前半に筑豊じん肺訴訟判決(福岡高判2002年7月19日)の判例批評として公表予定である。 7 潜在的被害に関する時効・除斥論についてのこれまでの研究をまとめ、総括をした単著を発表した(『時効と正義』)。
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