本研究の目的は、専門職業広告の法的規制について、具体的な政策提言を行うことにある。研究手法としては、実証的、比較法的、経済学的アプローチを行った。 実証的研究としては、弁護士会、消費者団体に、運用、現行法の問題点についてのヒアリング調査を行った。そこでは、運用実態としては、広告自由化後の広告は、さほど増加していないこと、利用者サイドからの問題点としては、広告の内容、特に、専門分野についての客観的な情報が不足していることが挙げられた。 比較法的研究としては、米国における判例法の展開および理論的研究についての文献調査を行った。判例法については、判例の一般法理を整理するともに、近時のリーディングケースであるカリフォルニア州歯科医師会事件最高裁判決について詳細な分析を行った。さらに、近時、EUにおいて専門職業サービス一般を対象とする規制の見直しが進められていることから、EUにおける規制の基本的考え方および加盟国(イギリス、ドイツ、イタリア)の個別の規制についての文献調査およびヒアリング調査を行った。 経済学的研究としては、広告自由化のもたらす経済的効果に関して、主として、米国文献による文献調査を行った。多くの調査によれば、広告自由化により、サービス価格の下落および品質の向上がもたらされることが明らかになった。 研究成果としては、米国法における判例法理の展開と専門職業規制の一般論、EUにおける規制の見直しの一般論、およびわが国における専門職業広告規制のあり方、それぞれについて、論文として公表する(一部印刷中である)。 今後の課題としては、利用者の利便性の確保という視点から、広告内容をいかに充実させていくかが重要であると考えられ、専門分野認定制度の制度設計等具体的な問題をさらに検討をしていきたい。
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