労働者の健康障害と法

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13620067
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 野田 進 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (90144419)
• 研究分担者: 中窪 裕也 千葉大学, 法経学部, 教授 (90134436) ; 和田 肇 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 教授 (30158703)
• キーワード: 職業病 / 私傷病 / 病気休職 / 労働契約 / 労働時間 / ヘルスケア / メンタルヘルス / 健康保険

研究概要

本研究は、労働者の病気およびヘルスケアに関して生じる法的諸問題を、総合的な視野で分析・解明し、その課題と解決のあり方について理論構築しようとするものである。
2年目にあたる本年度においては、大別以下の2つの研究を実施することができた。
第1に、初年度のドイツ・フランスの企業におけるヘルスケアの調査に引き続き、本年度は日本の職場における労働者の身体および心の健康に対するケアの現状について、ヒアリング等による調査を進めた。具体的には、(1)(株)富士通及び富士通川崎病院(平成14年8月1日)、(2)(株)日本航空及び日本航空健康管理センター(同年8月2日)、(3)(株)トヨタ自動車(同年10月25日)において、人事担当者、健康管理スタッフ及び産業医等に対するヒアリングを行い、討議を行った。あわせて、(4)メンタルヘルスケアを、企業の危機管理のためのサービスとして事業展開を始めた、(株)トッパンマインドウェルネスにおいて同事業の内容や展開等について説明を受けた。
第2に、ヨーロッパのヘルスケアについて、文献的な裏付けを行うべく、主任研究員である野田が、パリ第1大学法学部図書館、フランス国立図書館、公文書センター(Documentation Francaise)等で、文献検索および資料収集を行った。なお、収集の対象は、ヘルスケアだけでなく広く雇用・労働契約上の問題に及んだが、特にフランスのモラル・ハラスメントの解決方式について有益な文献を収集した。
これらにより、労働法学等における健康障害に関する法的アプローチの必要性を確認するとともに、いかなるレベルでどのような法的課題が存在し、解決が望まれるかについて一定の整理を行うことができ、とりまとめの方向を確認することができた。

研究成果

• [文献書誌] 野田 進: "最近の労働判例について(上)"中央労働時報. 998号. 2-13 (2002)
• [文献書誌] 野田 進: "最近の労働判例について(下)"中央労働時報. 999号. 2-10 (2002)
• [文献書誌] 野田 進: "労働判例の動き"ジュリスト『平成13年度重要判例』. 1224号. 210-220 (2002)
• [文献書誌] 野田 進: "変更解約告知"労働判例百選. (第7版). 174-175 (2002)
• [文献書誌] 和田 肇: "国立大学の法人化の現状と問題点"法の科学. 32号. 153-160 (2002)
• [文献書誌] 和田 肇: "Die Regelung der Arbeitsbedingungen in japanischen Betrieben""Arbeit und Recht,. 10/200. 369-374 (2002)
• [文献書誌] 和田 肇: "労使紛争はどのように解決されるのか"法学教室. 257号. 75-85 (2002)
• [文献書誌] 和田 肇: "労働条件の決定のシステム"法学教室. 258号. 85-89 (2002)
• [文献書誌] 和田 肇: "労働条件の不利益変更-個別合意または変更解約告知による変更"法学教室. 262号. 97-101 (2002)
• [文献書誌] 和田 肇: "労働協約の効力"法学教室. 263号. 144-148 (2002)
• [文献書誌] 和田 肇: "不当労働行為とその救済"法学教室. 267号. 113-118 (2002)
• [文献書誌] 中窪裕也: "最近の労働判例の問題点"労働経済判例速報. 1798号. 18-43 (2002)
• [文献書誌] 中窪裕也: "ディアローグ・労働判例この1年の争点"日本労働研究雑誌. 508号. 28-48 (2002)
• [文献書誌] 野田 進: "労働法の世界(第5版)"和田肇,中窪裕也と共著 有斐閣. 304 (2003)