今年度行った研究の概要は次のとおり。 第一に、従来から行ってきた刑事立法関連の研究をさらに進めた。盗聴法(通信傍受法)、性表現規制、少年法、監獄法等の研究である。たとえば、昨年の刑法学会では、性表現規制に関する報告を行い、実証的科学的研究の成果を採り入れながら、刑法の補充性・最終手段性を十分考慮に入れて立法すべきことを主張した。また、同学会の刑事立法に関するワークショップでは、盗聴法および改正少年法の立法過程を概観し、その中に含まれる問題点を指摘した。 第二に、他の個別分野の刑事立法の研究として、昨年の自衛隊法改正で新たに設けられた防衛秘密漏示罪の研究を行った。国家機密法制定運動の歴史、従来の法案との相違点、自衛隊改正の立法過程などを分析・検討した。現在、論文を執筆中である。 第三に、イギリスの立法のあり方の検討である。警察不服審査制度の改革、さらには、刑事裁判手続きの全面的な改革が行われつつある。これらについての資料を収集し分析に努めた。特に警察不服審査制度の改革については、日本の警祭不祥事対策との関連で大変参考になるものと考え、昨年9月と今年の2月に現地で調査を実施した。イングランド・ウェールズでは現在法案が上程されている段階で、改正の背景とともに、その立案過程についても、内務省の担当者等と会って聞き取り調査を行った。また、北アイルランドではすでに法改正がなされ一昨年から新制度が運用されており、その運用動向、特に警察と不服審査機関である警察オンブズマンとの関係について調査した。不服審査制度についても、来年度、速やかに論文の形でまとめたいと考えている。
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