本年度は上記の研究課題の2つの柱である、「子どもの権利(成長発達権)」の憲法上の地位の理論的解明とアメリカにおける少年司法実務の実地調査を行った。 まず前者については、主としてアメリカの子どもの権利論の文献についての研究を中心に行い、結論として、子どもの関係性論からのアプローチによって子どもの権利を説明すべきであるとした。そこから定義づけられる子どもの成長発達権とは、「いままさに成長発達の途上にある人格がそのままで認められ、将来成人して完全な自己決定主体となることが援助・保障される権利」である。これは憲法13条前段、子どもの権利条約12条等から根拠づけられる。なお、この研究の成果の一部については、拙稿「子どもの成長発達権と少年法61条の意義」『山梨学院大学法学論集』48号(2001年)に掲載した。 また後者については、アメリカのシカゴ市(イリノイ州)、ミルウォーキー市(ウィスコンシン州)、デンバー市(コロラド州)、サンフランシスコ市、サクラメント市(以上カリフォルニア州)、リノ市、ラスベガス市(以上ネバダ州)の各少年裁判所、少年拘置所、少年院、警察署、検察局、公設弁護人事務所等を訪問して、実地調査を行ってきた。特に検察官が訴追官として審判に立ち会うことが当たり前であるアメリカの少年司法制度は、その全体が非行少年の保護教育と言うよりもむしろ処罰化(あるいは厳罰化)に傾斜している傾向が明らかに見てとれた。犯罪発生件数等の社会的事情あるいは背景の違いはあるものの、検察官関与を認めたわが国の少年司法が参考にすべき実務の実態を調査することができたのは大きな意義であると考えている。なお、これらの調査に基づく研究の成果については現在執筆準備中である。
|