平成14年度はまずアメリカ合衆国の西部地域における少年司法の実態調査を行った。調査対象としたのは、ワシントン州キング郡の少年裁判所、少年院、ハーフウェイハウス、オレゴン州マリオン郡の少年裁判所、少年拘置所、少年院、修復的司法プログラム、ネバダ州クラーク郡の少年裁判所、地区検事事務所、公設弁護人事務所、刑事施設(青少年犯罪者プログラム)などである。今回の調査で明らかになったのは、少年司法手続で当たり前に保障されているはずの弁護人依頼権が小さな地域の裁判所は当たり前のように放棄させられていること、すなわち憲法上の適正手続の保障がなされていない場合があるということである。また移送によって刑事裁判所に送致された重罪少年は、地域によっては成人まで少年院で処遇されたり、あるいは成人刑務所でも特別の分画区で青少年処遇プログラムを受けたりし、いわゆる混合量刑(blended sentencing)が多くの地域で浸透していることがわかった。これらの実態調査の内容については、全国レベルの研究会で報告した。また現在投稿中でもある。 さらに本年度は、現在のアメリカの少年司法の一つの流行である「修復的少年司法」についての理論的研究を行った。結論的には、修復的司法が犯罪被害者、加害者、地域社会のバランスをとるアプローチを採用する限り、対象となる少年には過酷な責任を問う形で展開する嫌いが強いこと、ひいては少年の立ち直りのための少年司法が厳罰的手続に傾斜するおそれがあることを結論として導き出した。この内容については、平成14年5月に開催された日本刑法学会のワークショップで報告するとともに、いくつかの研究会で報告した。またこの内容の要旨については法学セミナー誌に公表した。
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