本年度は、少年司法におけるデュー・プロセスの保障の中でも、特に、(1)少年の司法参加と自己決定「権」の関係、(2)少年の付添人(弁護人)依頼権についての文献研究を中心に研究課題に取り組んだ。 (1)については、アメリカで近年盛んに行われている少年陪審制度(ティーンコート)という「少年による少年のための新しい裁判制度」を手がかりにして、少年司法手続きにおける少年の自己決定「権」の問題を、主としてアメリカ法、国際人権法に関する文献を中心に検討した。結論としては、わが国における少年(=子ども)は成長発達の途上にある権利主体であって、成人と同じような自己決定主体(=自己決定権の行使主体)ではないとした。そしてそれゆえに、少年司法への参加のあり方も成人とは異なって、まわりの人間(重要な関係にある者)との健全な人間関係の中で、その人間関係が失われない方法によって達成されなければならないこととした。アメリカ的な「自己決定=自己責任」の論理は少年司法と刑事司法の境界をなくす危険な論理であることもあわせて指摘した。 また(2)については、アメリカ連邦最高裁によるゴールト判決(1967年)以来、同国においては当然と考えられている弁護人依頼権の保障の実質を、国際人権法の観点も加味してわが国における付添人(弁護人)依頼権として再構成した。結論として、弁護士と少年援助者(ケースワークの専門家)がチームを組み、弁護士は法律家として、少年援助者は少年のサポーターとして少年との信頼関係を築いていく必要があることを指摘した(少年はこれら二者について「付添人」として依頼する権利を有すると理解する)。これは、少年、弁護士、少年援助者、親・保護者が一つのチームを組んで少年の立ち直りを図ることで、真の意味で少年自身の司法参加(付添人依頼権の保障)が達成されるからである。 以上が本年度中の研究成果であるが、来年度は本研究課題の最終年度となるので、デュー・プロセスの保障の内容の中で未検討の諸権利についてアメリカ法を中心に文献研究する予定である。
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