(1)今回の研究課題は、(1)少年審判の非公開、(2)少年刑事裁判の公開、(3)少年事件報道における本人特定事実の公表禁止、という3つの局面にさしあたり分けることができるが、平成13年度においては、まず、(1)論点をより明確化し、(2)「分析視角」を確認し、(3)研究遂行上の「仮説」を設定する、ことを目的として、これらに関するこれまでの日本の研究成果をあらためて分析・検討した。その結果、(1)表現の自由・報道の自由・知る権利の意義と限界、(2)裁判の公開と適正手続・公正な裁判、(3)公開・公表を求める「市民」の権利と少年の権利の拮抗と調和、などの基本視点がえられた(刑法雑誌論文参照)。 (2)また、少年の刑事裁判の公開について、11歳の被告人2人に公開刑事裁判を行ったうえで有罪を認定し不定期拘禁刑を言い渡したイギリスのバルジャー事件裁判が、被告人の実効的手続参加が不可能であったがゆえに、公正な裁判を受ける権利(ヨーロッパ人権条約6条)を侵害した、と判示した1999年12月のヨーロッパ人権裁判所判決を採りあげ、その意義、日本法に対する含意、改正少年法の運用のあり方への示唆などを検討した。この成果を論文にまとめて発表した(『光藤古稀祝賀』)。 (3)さらに、最近の公開・公表要求の一方の基盤には、少年非行に対する厳罰要求があるといえるが、これをめぐっては、2000年に少年法の改正が行われた。少年法の厳罰化をめぐって、(1)少年一般の規範意識の覚醒・強化のための厳罰化、(2)「責任」の自覚のための厳罰化、(3)少年法における「責任」の意義、という点について分析・検討し、その成果を論文としてまとめ発表した(犯罪と刑罰15号)。また、厳罰化の動きに対抗する少年事件弁護の拡大・強化の課題と展望を明らかにした(季刊刑事弁護29号)。
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