研究課題
基盤研究(C)
1 アメリカにおいては、少年法の厳罰化の傾向のなか、あるいは知る権利・報道の自由の要求により、少年の実名報道が拡大する傾向にある。少年法61条を批判し、とくに重大非行事件について、少年の実名報道を認める立場が強くなっているが、懲罰的制裁としての実名報道という考えは、市民の知る権利への奉仕という報道の役割を逸脱しており、また、少年の名前、顔写真など本人特定情報は市民の正当な関心事とはいえず、少年の本人特定情報に公共性はないから、名誉毀損・プライバシー侵害の法的責任を問われうる。2 アメリカにおいては、少年法の厳罰化の傾向のなか、あるいは少年の適正手続の要求として、さらには少年司法のアカウンタビリティーを確保するためとして、少年審判の公開という傾向が強まっている。少年の適正手続の本質的要請として、少年が審判手続を理解し、それに参加し、自由に自己の意見を述べることが保障されなければならない。少年審判の非公開は、たんに少年・関係者のプライバシーの保護、少年の健全育成の促進という目的からだけでなく、少年の手続参加の保障のために要請される。また、公開・対審の刑事裁判と少年の手続参加の保障とのあいだには、本質的矛盾の契機がある。少年を公開・対審の刑事裁判に付すことは、個別具体的事件において、公開・対審の刑事裁判が少年の手続参加の保障に反しない場合に限り許される。少年司法のアカウンタビリティーも、家庭裁判所における処遇選択に関する明確・説得的な理由の提示と決定要旨の公開、少年司法へのさまざまな形での市民参加などによって効果的に果たされうる。3 アメリカにおいてもみられるように、少年事件の実名報道や少年審判の公開の拡大傾向は、少年司法における厳罰政策の台頭という趨勢と強く関連している。しかし、効果的な犯罪抑止・再犯防止の観点からも、教育機能の確保のためにも、さらには法的正義という観点からも、厳罰政策への傾斜は批判されるべきである。
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The book for celebration in honor of Professor Mitsudo, (Sei-bun-do) vol.2