今年度は、ザンビアと南アフリカにおける現地調査の実施が、研究遂行上最も重要な位置づけを与えられていた。この調査では、ザンビアでは、グローバルな課題としての「民主化」プロセスに潜む諸問題について、聞き取り調査のほか、2001年末に実施された大統領、議会選挙に関する資料収集を実施した。また、南アフリカにおいては、ポスト・アパルトヘイト期における「紛争」の諸側面について、多面的な検証を行うための資料収集を実施した。幸い、ケープ・タウンに拠点を置くNGOにおいて興味深い資料を入手できたほか、ケープ・タウン大学の図書館における資料収集を実施することができた。また、ジョハネスバーグ、プレトリアでは、関係研究機関等において資料収集を実施した。 この成果の一部は、日本貿易振興会・アジア経済研究所との共同研究の下で進められている、「第三世界の紛争と国家」プロジェクトの成果論文として刊行予定である。この論考における目的は、南アフリカにおける、ポスト・アパルトヘイト期における「紛争」に関して、「自警活動」「タクシー戦争」と呼ばれる、暴力の連鎖が見られることを示した後で、双方に共通する論理を明らかにすることで、グローバル化のもとでどのような社会の「崩壊」現象が生起しているのかを考えるひとつの考察を行うことであった。 こうした具体的な成果を生かしつつ、最終年度である平成15年度においては、こうした現象をより理論的に読み解くための枠組みを検討し、その成果をなんらかの形で発表することにあるので、引き続き、調査検討を進めていく予定である。
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