今年度は、最終年度として、最終報告書を取りまとめるための、理論枠組みの再検討と資料解析、ならびに報告書執筆が主な作業となった。 幸い、この研究課題の成果の一部は、昨年度まで日本貿易振興会・アジア経済研究所との共同研究の下で進められた、「第三世界の紛争と国家」プロジェクトの成果論文としてすでに刊行された。この論考では、南アフリカにおける、ポスト・アパルトヘイト期における「紛争」をめぐり、「自警活動」「タクシー戦争」と呼ばれる暴力の連鎖を考察し、その双方に共通する論理を明らかにすることで、グローバル化のもとでどのような社会の「崩壊」現象が生起しているのかを考えるひとつの考察を行った。 こうした具体的な成果を生かしつつ、最終年度にあたる平成15年度は、社会学の観点からこうした問題を広くこうした現象を考察する視座を提供してきたM・カステルの議論を参照することと、南アをめぐる新たな問題として生起してきたトラフィッキング(人身売買)の問題に関して、モロ・ソンゴローロ(Molo Songololo)という南アのNGOの報告書を組み入れる形での考察を進めてきた。 その結果として、南アフリカにおける問題が、非常にグローバル化文脈と不可分な形で生起していることを改めて確認したほか、1980年代まで長く南アフリカの政治・経済・社会を規定してきたアパルトヘイト体制が持つ意味の重要さという歴史的文脈の意味を新たに抽出することに成功した。こうした形で、今日のアフリカにおける諸現象が、グローバル・ローカルという垂直的な空間的・時間的連続性と、歴史的な通時性の交差する場に生起している姿を改めて一つの事例から解読できたことができたことは、今回の研究の大きな成果であった。
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