研究課題/領域番号 |
13620089
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
玉田 芳史 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 助教授 (90197567)
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研究分担者 |
木之内 秀彦 鈴鹿国際大学, 国際学部, 教授 (00204941)
木村 幹 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 助教授 (50253290)
片山 裕 神戸大学, 大学院・国際協力研究科, 教授 (10144403)
島田 幸典 京都大学, 大学院・法学研究科, 助教授
横山 豪志 筑紫女学園大学, 文学部, 講師 (80320381)
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キーワード | 民主化 / 地域研究 / 政治学 / アジア / 多国籍 |
研究概要 |
本研究は東・東南アジア地域諸国の民主化過程を説明することを目的としていた。地域研究者は韓国、フィリピン、タイ、インドネシア、インドシナの専門家からなり、理論研究者はヨーロッパ国制史と政治理論の専門家からなっていた。こうした陣容により、比較と歴史を視野にいれつつ、解明を試みた。 各国の民主化については以下の特色が浮かび上がった。韓国において重要なのは、権威主義体制の正当化に腐心する軍部と民主化を求める勢力との間で闘争が繰り広げられる中で、何が民主的な政治体制なのかをめぐって国民的合意が形成されることであった。フィリピンにおいては1986年の革命が民主化の契機となったものの、強大な大統領権力と弱体な行政機構とのバランス(つまり民主主義体制)を維持するのに重要な役割を果たしてきた司法制度の正当性が揺らぎ始めていることが危惧されるようになっている。カンボジアの民主化過程は内戦に終止符をうつためのパリ和平協定を契機として国際社会から与えられた民主政治がローカル化してゆく過程であり、大きな問題が山積していることが明らかになった。タイでは民主化には四半世紀を要しており、鍵となったのは劇的な事件よりもむしろ批判勢力・消極勢力の漸進的な慰撫であった。インドネシアではエリートの自己保身願望と民主政治の形骸がスハルト体制崩壊を端緒とする民主化過程の始動を助けていた。 これらの研究から確認できた主な点は次の通りである。1)民主化過程が始まる契機は一様ではない。2)民主主義体制の構築や維持は、権威主義体制の崩壊よりもはるかに困難である。3)民主化には長い時間を要しており、分析にあたっては長めの時間軸を設定しなければならない。このようにアジア地域諸国の民主化についてある程度の一般化はできたものの、上からの民主化、下からの民主化などといった類型化を超えて、理論化にまでは到達できなかった。
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