研究課題
基盤研究(C)
本研究は1990年代のラテンアメリカで実施された新自由主義政策に反対した労働運動とカトリック教会の連携をアルゼンチンのケースを中心に検討することを目指したものである。研究のきっかけは、本来水と油の関係にある労働運動とカトリック教会が新自由主義反対という点で連携しているケースを見出したからであり、そうした事例を「ラテンアメリカにおけるカトリック教会と労働運動」のなかでまとめておいた。本研究はこの連携の実態をさらに掘り下げることを目指したが、研究を進める過程で労働運動の新自由主義に対する対応は支持から反対まで多様であること、カトリック教会も聖職者の一部が新自由主義に反対して労働者と共闘したことはあったものの、上層部は慎重で政府との対立を避けようとしたことがわかった。そこで、労働運動をポピュリズム(ペロニズム)の一部分として把握し、それを基にしてカトリック教会との関係を探ることを目指した。その成果が「ラテンアメリカにおける古典的ポピュリズムとネオポピュリズム;分析枠組の変化をめぐって」であり、メネム政権下の労働運動の体制が彼のネオポピュリズムに妥協的だったかを理論的観点から検討した。また、大陸的規模の新自由主義的協力ともいいうるFTAA(米州自由貿易圏)構想に関しても、アルゼンチンを含めたメルコスール諸国の労働運動の一部が強く反発し、カトリック教会も批判的姿勢を示しているが、教会は対話の必要性を強調するにとどまっており、そこに政治勢力としての教会の限界があることを「Mercosurから見たFTAA:政府と市民社会のレベルから」で示した。総じて、新自由主義への反対で労働運動とカトリック教会は連携しうる可能性があったが、労働側が分裂し、教会が政治活動に慎重なことなどから、両者の連携は一部に限られたといえよう。
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国際問題 (近刊、未定)
『ラテンアメリカの諸相と展望(仮題)』所収。 (行路社、近刊、未定)
ラテンアメリカ:開発の思想(今井圭子編)所収。 (日本経済評論社、近刊、未定)
International Problems November(forthcoming)
Latin America, its diversity and perspectives (Kourosha) (forthcoming)
Latin America, Ideas for Development edited by Keiko Imai (Nihon Keizai Hyoronsha) (forthcoming)
ラテンアメリカ時報 46巻6号
ページ: 2-7
歴史地理教育 641号
ページ: 34-39
社会と倫理 9号
ページ: 41-67
Society and Ethks No.9