本年度は、本研究計画の最終年度に当たる。そのため、第一に、当然のことながら、研究成果報告書の作成に最重点が置かれた。具体的にいえば、これまで集中的に収集してきたわが国内外の諸資料を綿密に検討することで、多数の事実の発見と政治過程の整理・位置づけを行い、理論の精緻化もはかった。第二に、この作業と併行して、報告書作成に不可欠な情報を収集または確認する-この確認とは「以前閲覧した資料を再度見て確認する」、または「収集しなかった部分を見る」という意味である-目的で東京に数回、出張旅行を行い、靖国偕行文庫所蔵の旧陸軍関係資料『井上忠男資料』や国立国会図書館所蔵のアメリカ側公文書ほか、一次資料の調査計画も執行した。 このような研究計画の着実な執行の結果、前年度までに固めた方針に基づき、占領期の日本人戦犯釈放問題(占領後期におけるGHQの釈放政策)に関する分析、および対日講和条約第11条(戦犯条項)の形成過程に関する分析を完了することができた。 その具体的な成果を挙げれば、(1)GHQの減刑計画が立案される政治過程、(2)GHQが仮釈放委員会を設置し、戦犯の審査を実施し下いく政治過程、および同時期におけるイタリアの状況等、(3)対日講和条約第11条の形成過程における詳細な条文の変化とその意味等、が明らかとなった。さらに、いずれの場合も、日本側がいかに対応したのか、ドイツ要因がいかなる関連性を有していたかを併せて分析した。 本研究計画の成果は、むろん研究成果報告書にまとめたが、さらに今後、占領期の釈放政策、対日講和条約第11条の形成過程の二つのテーマに分割し、レフェリー制の全国学会誌で広く発表したいと考えている。
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