研究概要 |
本研究の目的は、朝鮮半島を軸に北東アジアにおける米軍の兵力構成(Force Structure)の変化要因を説明し、その上で変化可能性のシナリオを提示し、それに対応する米軍受入国の選択肢を探ることである。この目的達成のため、歴史的アプローチ、現状分析アプローチ、将来へのシナリオ・アプローチをとる。 本年度は、歴史分析の資料収集を行った。米情報公開法を駆使して入手された資料(National Security Archives, Japan and the United States:1960・1976)の文献複写を行った。すでに公開されている国務省ファイルとあわせると、1970年代前半までの日米の安全保障関係を検討できるようなった。全部で13,416枚に及ぶ文書資料に関する分析を進めている。途中経過として指摘できるのは、日米間の安全保障関係の複合的な相互依存性であろう。日本の軍事増強が米国から求められつつも、それを支える親米政権の維持強化が図られた。つまり、米側から見ると、在日米軍基地を維持するという米国の利益を追求となっていた。また、日本側から見ると、日本の保守政権の維持につながっていた。こうした両者の依存関係が存在したのである。 また、公開情報や欧米で出版された研究成果を入手して、ブッシュ政権の軍事戦略および対北東アジア政策の展開を分析することにした。とりわけ、9・11以後の米政略の変化要因を分析した成果の一部を学会報告(日本平和学会、2001年11月18日、立命館大学)を行い、論文(裏ページの研究論文を参照)として発表した。そこで、現在まで採用されてきた米国の前方展開戦略は、湾岸戦争では潜在的に、そして、アフガンでの軍事行動において顕在的に重大な質的変更が生まれていると指摘した。 当初の計画を大きく変更した点は、米国での調査である。9・11テロの結果、航空機の安全への不安およびワシントンDCでの面談キャンセルが予想されたので、米国への出張を断念せざるを得なかった。
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