本研究の目的は、対立から和平へのプロセスを歩む朝鮮半島を軸に、北東アジアのおける米軍の兵力構成(force structure)の変化要因を説明し、その上で変化可能性のシナリオを提示し、それに対応する米軍に受け入れの同盟国の選択肢を探ることである。 冷戦期において共通の脅威の下で形成・維持されてきた同盟関係は、第一に軍事的な考慮、第二に経済的な考慮が必要とされてきた。ポスト冷戦期を経て、テロリストが米本土の中枢を直撃した9・11後の国際社会において、共通の脅威認識を維持するのは容易ではなく、同盟関係の質的転換が進もうとしている。具体的には、兵力数、規模、防衛力の構成する部隊編成が、同盟国の間での協議を必要とされる。特に兵力構成の変更は、基地の態様の変化を伴うだけにそれぞれの国内政治の影響に晒されている。 最終年度となった2003年度(同年4月から翌年3月)の直前、2003年3月20日、米英軍によるイラク侵攻作戦が開始され、サダム・フセイン政権は崩壊したものの、米軍と中心とする「有志連合(Coalition of the Willing)」諸国の軍隊の下で占領統治が、今なお、進められている。2003年2月に米議会公聴会におけるラムズフェルド国防長官は、伝統的な同盟国から兵力削減を実施し、有志連合による世界規模の米軍基地網への拡大を発表した。米軍削減の対象となった同盟国は、ドイツ、韓国である。2004年に入り、在日米軍の再編検討が進められている。 最終年度には、これまで収集してきた資料を整理し、分析を加えた論考を作成した。2月には、報告書が完成した。この報告書においては、在日米軍の再編と自衛隊との「役割と任務(roles and missions)」がどのような過程を経て作成されたのかについて、米太平洋軍の作成したコマンド・ヒストリーから再構成した。焦点として、米政略における在日米軍基地の役割を分析し、それを補完する自衛隊の「役割と任務」の形成とその展開について分析した。
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