本研究の目的は、対立から和平へのプロセスを歩む朝鮮半島を軸に、北東アジアのおける米軍の兵力構成(force structure)の変化要因を説明し、その上で変化可能性のシナリオを提示し、それに対応する米軍に受け入れの同盟国の選択肢を探ることである。 冷戦期において共通の脅威の下で形成・維持されてきた同盟関係は、第一に軍事的な考慮、第二に経済的な考慮が必要とされてきた。ポスト冷戦期を経て、テロリストが米本土の中枢を直撃した9・11後の国際社会において、共通の脅威認識を維持するのは容易ではなく、同盟関係の質的転換が進もうとしている。 研究期間中に、911事件が起き、と研究実施方法の一部変更を行った。北東アジアにおける米軍の兵力構成に関する動きを理解するために、イギリスとドイツの研究機関を訪ねて、米欧関係の変化に伴う米軍の兵力構成の変更について意見交換を行った。国内においては、北東アジアの安全保障問題に詳しい李鍾元氏(立教大学教授)を米軍基地のある沖縄に招き意見交換を行い、シンポジウムを通じて、本プロジェクトで得た研究成果の一部を公開した。東京に出張して、日本の安全保障専門家との意見交換を行い、日本の視点を把握する上で有意義であった。 最終年度直前の、2003年3月20日、米英軍によるイラク侵攻作戦が開始され、サダム・フセイン政権は崩壊したものの、米軍と中心とする「有志連合(Coalition of the Willing)」諸国の軍隊の下で占領統治が、今なお、進められている。2003年2月に米議会公聴会におけるラムズフェルド国防長官は、伝統的な同盟国から兵力削減を実施し、有志連合による世界規模の米軍基地網への拡大を発表した。米軍剤減の対象となった同盟国は、ドイツ、韓国である。2004年に入り、在日米軍の再編検討が進められている。これまで収集してきた資料を整理し、分析を加えた論考を作成した。2月には、報告書を完成させた。
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