今回の研究はメディアの発達状況、報道機関における自己採算制の導入、報道競争とメディア市場の再編、報道改革の進捗状況に対する具体的な検証によって、改革期の中国における情報革命の「実態」を次のように明らかにした。(1)改革期に入り、中国経済の発展と国民の所得水準向上はIT技術の発展、テレビ、ラジオ、電話、パソコン、新聞、雑誌、図書の普及に好影響を与え、情報量の著しい拡大に繋がっている。(2)「自己採算制」の導入および報道競争の激化を背景として、メディアの立場が従来の「権力一辺倒」から読者・視聴者のニーズへと傾斜し始め、ニュースの速報性、客観性、きめ細かさ、現場取材を重視し、批判・暴露報道や政策議論に力を入れ始めている。報道競争の結果、宣伝を目的とする共産党の機関紙および番組は影響力が低下し、市民向けの新聞雑誌および番組などは成長しつつある。(3)中国当局はメディアの経営自立、報道改革を主張し、緩やかな報道自由化を容認しているが、他方、権力への求心力を維持するという立場から、共産党による「世論誘導」を強調し、メディア機関の創設を厳しく制限し、さまざまな報道規制を行っている。(4)中国のメディア機関、ジャーナリストは報道規制を突破するために、当局に対してさまざまな「駆け引き」を仕掛け、「一歩前進、半歩後退」の形で報道自由の空間を広げようとしているが、そのプロセスは紆余曲折の道をたどっている。
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