本年度は、研究初年度にあたるため当該課題における研究ネットワークの構築とこれまでの研究において手つかずであった国境地域における現地調査を行った。前者に関しては、海外研究協力者らのコーディネートのもとで2001年5月30日にハルビンで開催された国際会議(「中露地域協力と発展」:黒龍江省社会科学院シベリア研究所主催)において「中露国境地域協力-機会と挑戦」(中国語)というペーパーを、9月5日にウラジオストクで開催された国際会議(「ロシア・日本・中国の相互関係史」科学アカデミー極東支部歴史・考古・民族研究所主催)で「中露パートナーシップと国境協力」(ロシア語)というペーパーを報告し、それぞれの会議の主催者及び参加者らと当該課題に関する情報交換を実施し、また今後の研究協力体制の構築づくりを行った。 後者については、2001年8月と9月にアムール・ウスリー河における(中露間の)係争島嶼の帰属結果と利用の現状、国境点における経済協力の実体に関して、中露の双方からそれぞれ現地調査を行った。とくにウスリー河流域一帯の(珍宝島を始めとする)島嶼帰属の歴史と現状は世界的にも知られておらず、その研究成果は画期的なものとなった。これに関しては、「中露河川国境の挑戦-アムールとウスリー」(『ロシア極東地域情勢の研究』日本国際問題研究所、2002年2月)として公刊される。 さらに中露東部国境地域の協力関係をより客観化するため、旧ソ連の西部国境(ロシア・中央アジアと中国)の国境問題についても検討した。この成果は、「上海プロセスの軌跡と展望-ソ連崩壊から機構設立まで」(『ロシア研究』第34号)として公表される。本論文は上海協力機構に関する本邦初の本格的分析になると確信している。
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