本研究において、最終年度にあたる今年度は、5月から6月にかけて中露国境河川であるアムール河2000キロ全体を視察し、これまで手つかずになっていた中露国境地域の領土問題の解決(係争地であった島嶼がどのように中露間で配分されたか)の実体を明らかにすると同時に、国境画定後の中露国境地域の現状についての調査を行った。また中国黒龍江省の各県レベルの郷土誌を収集し、ロシア側でも国境警備隊、税関、行政府関係者からの聞き取りをした。その結果、ポスト冷戦時代の中露国境交渉とその実体がほぼあきらかになり、国境「担ぎ屋」貿易の現状とあわせて分析した最終成果を、角川書店から『中・ロ国境4000キロ』(2003年3月)として刊行した。この成果は欧米の中露関係研究でも、また中露の研究者でも十分にはなしえなかった領域(領土問題)を全面的にカバーしている。成果の一部は、2002年6月に中国のハルビンで開催された国際シンポジウムなどですでに報告されており、まもなく中国語で刊行される。さらに、11月には北京とハルビンから著名なロシア研究者を招請し、スラブ研究センターで「中露『戦略的パートナーシップ』-北京とハルビンの見方」と題したセミナーを開催した。報告者のロシア語ペーパーとあわせて、まもなく英・露・中・日の4言語で編まれたプロシーディングスが公刊される。 また本研究を通じてあきらかになった中露関係にかかわるレッスンを、他地域に応用する試みとして、中露と中央アジアとの関係について、2002年7月の国際平和学会(ソウル)で報告した。この成果については、日露関係や南アジアに目配りしつつ、次の科研プロジェクトととしてさらに展開する計画である。
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