1。欧州における危機管理のケース・スタディーとしては、本実績報告の研究発表中の論文でバルカンをめぐる動向の整理・分析を発表した。このほか、欧州の安全保障組織の危機管理を含む全般的な動向を整理し、日本との協力課題を論じた英文論文および安全保障概念の整理を行なった論文(いずれも本報告に記載)をまとめた。 2。欧州連合の軍事的および非軍事的危機管理能力の準備状況については、前者に関しては軍事力の整備をめぐり予定のスケジュールまでには整備が困難であるとの見方が専門家の間で示されている。後者については、ボスニアでの国連の警察活動を2003年1月から引継ぎ、欧州連合としての最初の実践活動とすることで合意がなされた。 3。NATOは、ボスニアのSFOR、コソヴォのKFORに加えて、マケドニアにおける反政府武装勢力の武装解除を支援し、続いて国際モニター要員の安全確保に関する作戦を実施している。 4。OSCEはバルカンや旧ソ連領域で非軍事的危機管理の実践を続けているが、実践面のみならず、欧州安全保障をめぐる政治対話面での活動を再強化する方向が2001年12月の外相理事会で打ち出された。リソース・リストであるREACTについては、関係国の貢献が必ずしも十分ではなく、欧州連合との競合が原因の一つとして指摘されている。 5。関連の欧州組織間の関係については、欧州連合が軍事的危機管理を実施する上でのNATOとの協力設定をめぐっては、トルコの異議が降ろされたが今度はギリシアの態度により、進展が止められている。欧州連合は国連およびOSCEとの協力関係設定を積極的に進めている。
|