1.欧州連合の軍事的・非軍事的危機管理は、イラク問題をめぐる英国と独仏との対立にもかかわらず、2003年以来、急速に発展してきた。 2.EUは、軍事的危機管理については、マケドニアにおいてNATOを引き継いだ「コンコルディア」を2003年3月に開始、同年12月に作戦を終えた。同年6月-9月の間は、コンゴ共和国の北東部でEU独自作戦である「アルテミス」を実施した。2004年末までに、ボスニア=ヘルツェゴヴィナでのNATOの作戦(SFOR)を引き継ぐことになっている。 EU内の非同盟・中立国は国内世論との関係で、文民警官の派遣などの非軍事的危機管理部門を並行して発展させる努力をしており、2003年1月以来、ボスニア=ヘルツェゴヴィナに警察ミッションを置き、2003年12月からはマケドニアでも警察ミッションを開始した。 3.EU=NATO間では、EUが軍事的危機管理を実施する場合、NATOの集合的なアセットと能力のEUへの提供を可能にする協力枠組みが作られた。 4.NATOは、アフガニスタンのカブールに司令部を置いてISAFの指揮をとることになり、イラクにおいては、ポーランドに技術的支援を提供するなど、欧州域外の作戦に関与することになった。 5.上述のようなEUの活動の発展は、OSCEの非軍事的危機管理にも影響を与えた。EUが将来、EUの加盟国となるバルカンの作戦を実施するようになり、OSCEはほかの国際組織の協力がまだ十分でない中央アジア諸国において警察協力などを実施することになった。 6.EUは、EU独自作戦、NATOの協力を得て実施する作戦のみならず、EUとしてプールした文民警官を国連の平和維持活動に貢献することも可能である。危機管理活動によって安定を域外に供給することによって、EUは国際的な影響力を増大させるだろう。
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