平成13年度は初年度に当たるため、資料収集とヒアリング調査に重点を置き、執筆のための前段階作業として収集資料の整理とデータ・ベース化作業に力を集中した。資料収集は対中国輸出統制委員会(CHINKOM)の活動、CHINCOM内部における多国間協調と対立の実相を裏づける原資料の検索・複写を行うためにアメリカ国立公文書館での作業を行うとともに、朝鮮戦争で頂点に達した東アジアにおける冷戦をアメリカとともに戦った韓国が経済封じ込め戦略にどのように組み込まれ、どのような役割を果たしたかについて、韓国の専門家を中心にヒアリング調査を行った。またCHINCOM体制に深く組み込まれた日本の政府、産業界が対中国輸出統制の強化にどのような認識をもって臨んだか、という問題意識から、平成13年度は関西・九州の産業界の認識に絞って資料収集とヒアリング調査を試みた。平成13年度の調査・研究を通じて得られたひとつの問題意識は、次のようなものである。「CHINCOM体制は冷戦時代におけるアメリカの中国封じ込めの重要な挺子となったが、当時の中国の軍事能力に対するアメリカの認識と現在のアメリカの新たな中国封じ込め認識の芽生えとの間に連続性があるとすれば、その根拠を何に求めればよいのか。」このような問題認識に立って、平成13年度の研究成果の一環として、現代の国際輸出規制政策の根底にも流れ続けている「地技学(geo-science and technology)」思考の概念を開発し、英語論文を公表した。この概念は、CHINCOMを通じた対中国経済冷戦の戦略にも適用可能な普遍性をもった概念として来年度以降の研究・調査を行っていく際の基礎的鍵概念にしていく予定である。
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