平成14年度は前年度の調査・研究作業を継続することに主眼を置くとともに、これまでの研究成果を踏まえながら、内外での研究発表を行ってきた。調査・研究作業は平成14年3月に朝鮮戦争の戦場となった韓国での聞き取り調査を学会関係者、経済人、ジャーナリストOBから行った。次いで、7月から8月にかけてロンドンのPublic Record Officeにおいて1952年の日本の対共産圏輸出統制委員会(COCOM)加盟をめぐる英国政府の対応と極東COCOMの新設を強硬に主張するアメリカとの対立に関する興味深いドキユメントの発掘、また極東COCOM新設問題をめぐる米英対立の妥協の結果として成立した対中国輸出統制委員会(CHINCOM)内部での統制リスト作成や例外輸出問題をめぐって戦わされた米国と英国および他の加盟国との対立・妥協外交に関するドキュメントの調査を行った。同様にパリでも外務省と国立図書館に所蔵されているCHINCOM関連文書や研究文献の調査にあたったが、英国Public Record Officeに所蔵されているドキュメントほど、まとまった形で存在していないことが判明した。ドキュメントの総量は膨大な数にのぼり、来年度も引き続き調査と複写作業を継続しなければならない状況である。国内でも日中貿易にCHINCOM規制による影響の大きさについて、聞き取り調査などを行った。なお、この研究の成果の一部を重点領域研究(A)「冷戦史の再検討」の研究発表において(平成15年2月8日)『経済冷戦のグローバル化と経済冷戦の地域化をめぐる同盟政治の展開』と題して報告を行った。
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