本研究では、日独両国について、特に近年それぞれ顕著である行政改革について、その最新状況を分析した。日本では情報通信政策及び銀行政策を取り上げ、ドイツでは、市町村改革と公務員制度改革を論じた。規制政策である両部門では、原則として一層の規制緩和が進展しているのが特徴である。しかし、情報通信政策を更に細かく見てみると、テレコム政策とインターネット政策では、全く対照的な展開が看取できる。1985年以降規制緩和が進展してきたテレコムでは、その緩和もいよいよ最終段階を向かえ、不採算地域に関するユニヴァーサルサーヴィス規制と接続規制のみを残し、ほぼ徹底した規制緩和の方針が出されているのに対して、2002年まで自主規制を中心とした未規制状態にあったインターネットでは、プロバイダ責任法の施行により、新たな規制がなされた。今後の展開によっては、更なる規制措置も必要となろう。また銀行政策では、2度のビッグバンを経て、日本の銀行界は世界的な競争に晒された。 こうした具体的政策領域での改革が顕著な日本に対して、ドイツでは、市町村合併と公務員制度改革という、いわばメタフィジカルな制度改革が注目される。1990年の統一以降、新5州での市町村改革は継続され、特に統一市町村方式で正式合併する合併モデルと、緩慢な行政組合による連合モデルとが併用されて、各市町村の実情に応じた市町村改革が奏功している。また、連邦、各州、各市町村を通じた統一的な公務員制度の改革も、成果を挙げている。1997年に施行された公務員制度改革法の成果が、連邦政府の報告書として評価され、それに基づいて、2002年には俸給構造改革法が施行され、業績給の更なる導入が決定した。また、今まで未改革であった大学教員制度も、大学要綱法の抜本的改革によって、大きく変更された。相当程度成果の挙がっている両国の行政改革進展状況を、更に注意深く観察していきたい。
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