平成15年度は、持続可能性に関して、持続可能性の一般概念にかかわる研究と、特定の資源の利用に関する研究の二つの研究を行った。 一つは、持続可能性指標に関する研究であり、"The Broad Stock of Society's Capital and Sustainable Development"という論文としてまとめた。そこでは、人工資本・自然資本を統合して"the broad stock of society's capital"(BSSC)と定義し、その遺贈を持続可能性と結びつけた。具体的には、持続可能性を「遺産制約」(bequest constraint : BC)および「世代合理性」(generation rationality : GR)の二つの概念を用いて定義することで、BSSCの定義の仕方にかかわらず、各資本間の限界代替率が限界生産性の比に等しくなることが得られた。このことは、BSSCの時間を通じた変化率が、いわゆる「ネットインベストメント」という指標の符号と一致することを意味することで、持続可能性指標の意味づけを与えた。他方、現実経済の持続可能な発展の実現可能性について、「環境保全と経済発展」という論文にまとめた。そこでは、投資、輸出、消費などのマクロ的指標をもとに、環境保全がそれらをどのように上昇させるのかを論じることで、経済発展と結びつけた。この論文は、池田他編『リスク、環境および経済』(勁草書房)に収められた。 二つ目の研究は、水資源の持続的利用についてであり、「河川流域における最適水配分について」というタイトルの論文としてまとめた。ここでは、河川流域で水利権取引を行っても、効率性を達成することは出来ないが、上流・下流で課税・補助金政策を行うことで、効率性を達成することが出来ることを示した。
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