グリーン国民会計の持続可能性指標は経済動学の中で意義付けられてきた。まず、「グリーンNNP(NDP)」は、Weitzman(1976)の意義付けを基礎として、「持続可能な発展」の議論において中心的な役割を果たして来た。しかし、効用関数・非コンスタントな割引率・環境アメニティー・外生的技術進歩等の要因の導入に関して脆弱であることが知られている。一方、世界銀行で近年採用されている指標である「純投資」は、外部性も考慮した経済で適用することが出来ることが知られているが、功利主義による厚生的意義付けが与えられているだけであり、将来世代との厚生配分のあり方を規定する「持続可能な発展」の基準としてはより一般的な厚生関数により意義付けが行われるべきである。 本研究では、これらの二つの持続可能性指標について、それぞれ、従来とは異なる立場から意義付けを行った。グリーンNNPに関しては、「純支出ストック」および「利子ストック」を定義し、この二つの定義に基づき、最適経路上でグリーンNNPを導出する。具体的には、これら二つのストック和の利子から、このストック和への投資を控除したものがグリーンNNPであることが示される。さらに、この導出では、上に述べた諸要因が導入されても定義づけは変化しないことが明らかにされた。 一方、純投資については、次のような前提に基づき、一般的な資源の評価関数のもとで、以下のように純投資を意義付けた。各世代は次世代に対する資源遺贈制約を負っている。その制約のもとで自身の効用を最大化する。その結果、資源の時間を通じた変化率の符号が、必ず純投資の符号に等しくなることが導かれる。すなわち、純投資は、一般的な資源評価関数の下でも純投資と関連する。 以上は、理論的な持続可能性指標についての考察であるが、現実的な理解、すなわち環境保全と経済発展が両立するか、という観点から、実際のさまざまなデータをもとに論じ、持続可能な発展のためのシナリオを提示した。
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