本年度においては、社会思想史的方法によって、フランス自由主義の成立の概要を確定する作業を中心に研究をすすめた。とりわけ、公共性論の側から、フランス自由主義の独自の問題を、究明することに、力を注いだ。近代的自由を私的自由と政治的自由の分離・対立・統合においてみるフランス自由主義の独自性を考えるとき、こういう導入視角がもっとも適切だという確信を得た。まず、フランス革命後の自由と公共の軸となる「世論」について、観念および装置の両側面より接近した。コンドルセとコンスタンを軸に、レドレールの『世論の理論』を組み込んで、フランス自由主義の鍵としての「公共」という装置について基本骨格が明らかにしえたと思う。グレゴワールの位置の重要性を発見したので、文献の購入も含め、これを研究計画に組み込んでいきたい。 レドレールについては、文献が古書のため確保に手間取っているが、『世論の理論』の基礎を構成する思想分析をおこない、その社会思想と動産と土地との対立という問題提起で有名なレドレールの経済論との関係についても、おおよその見通しをつけることが可能となった。次年度は、経済思想史の視点を重視して、フランス自由主義の基本構成を明らかにしていきたい。レドレールの経済思想を軸に、コンドルセ、コンスタンの経済社会思想の位置付けも含めて、研究の全体をまとめる所存である。
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