研究概要 |
「クールノー競争と規制産業におけるアクセス料金」の要旨はつぎのようである.モデルでは,最終生産物の供給者の一人が競争相手によっても需要される投入物の唯一の供給者であり,その価格政策が規制されている状況を想定する.典型的な例としては,電力,通信等の産業が考えられる.分析した主要な問題は次の二つである. (1)下流企業のアクセス料金は上流企業の限界費用とどのような関係があるか. (2)独占企業の最終生産物の価格は限界費用とどのような関係にあるか. (1)に関しては,Baumol-Willigの有効成分価格形成ルール(Efficient Component Pricing Rule略してECPR),すなわち,「最適アクセス料金=アクセスのための直接費用+アクセスのための機会費用」という公式が知られている. 従来の研究では,最終生産物市場における競争が価格を所与として行われること,そして自由参入により利潤が消滅する状況が分析されてきた.また政府の予算制約を考慮しない場合が扱われてきた.本論文では,一般の非線形の需要関数をもつ寡占市場を想定し,必ずしも自由参入を想定せずに上の公式が具体的にどのような形をとるかについて明確にし,これまでの分析結果と比較した. なお「次善最適における厚生変化の評価」では次善最適点における極値条件を用い,次善解を規定する予算制約パラメターの変化が経済厚生に及ぼす効果を示す公式を導出した.
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