研究課題/領域番号 |
13630020
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
高橋 青天 明治学院大学, 経済学部, 教授 (10206831)
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研究分担者 |
坂上 智哉 熊本学園大学, 経済学部, 助教授 (50258646)
増山 幸一 明治学院大学, 経済学部, 教授 (60144200)
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キーワード | 最適成長論 / 資本集約度 / 資本・労働比率 / 高度成長 / リプチンスキー効果 |
研究概要 |
本年度の研究では、「古い成長論」、特に新古典派二部門最適成長理論に立脚し、その理論で重要な役割を演じる消費財部門と投資財部門の資本集約度(資本・労働比率とも呼ばれる)が、戦後日本経済の発展過程でどのように変化したかを調べることにより経済発展のメカニズムを明らかにする。そのために、産業連関表を用いて日本経済を消費財部門と投資財部門の二部門に集計し、両部門の資本集約度を計算する。計測結果は、戦後日本経済の発展過程が宇沢論文(1964)で予測された最適経路にかなり近いものであった。すなわち、高度成長期においては投資財部門が消費財部門よりもずっと資本集約的であり、このため貿易理論でよく知られている「リプチンスキー効果」が波及的に働き、「投資が投資を呼ぶ」状況を作り出した。ところが、高度成長にともない「慢性的労働不足」による賃金率の上昇は、労働投入を比較的多く使う消費財部門の「労働節約的技術導入」を促進し、これは消費財部門の資本集約度を急激に増加させ、70年前後に「資本集約度の逆転」が生じた。その後は、消費財部門の資本集約度が投資財部門のそれをわずかに上回る状態がバブル発生まで続く。この状態は、両部門の均等成長をもたらし、GDP年平均成長率4%台の安定成長をもたらした。85年から始まるバブル期と、90年からのバブル崩壊期は、消費財部門の資本集約度が投資財部門のそれにくらべて異常に高くなり、両部門のアンバランスが増し、日本経済は不安定な状態に置かれていることがわかる。この分析結果は、経済発展過程の分析では、人的資本やR&D過程をモデルに導入することよりも、産業間の相互連関を明示的にモデルに組み込むことの方がより重要であることを示唆しているように思われる。
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