本年度は、初年度の研究として労働災害・職業病統計及び職業別死亡統計に関連する資料収集と検討を行い、以下のような国際動向を把握し、さらに部分的な比較研究を行った。 1、労働災害・職業病統計に関しては、国際比較が困難とされるが、第16回国際労働統計家会議(1998年)では概念、用語の定義、対象、調査方法等について検討がなされ、そのための多様な準備が行われた。その後ILOにおいては、国際的な労働災害統計の推計や途上国を中心とする統計未整備地域での統計作成、部分的な国際比較等の具体的な活動が推進されているが、本統計の国際比較はきわめて困難であることが明確になった。一方、ヨーロッパでは従来型の労災統計の比較研究があるが、最近は新しいタイプの労働関連疾患やストレス性疾患に関する研究がすすんでいる。 2、職業病死亡統計における国際比較プロジェクトが、欧米各国の専門家を含んだ大規模な調査研究として進められ、多くの成果が蓄積されている。本分野については、欧米では、西欧、及び北欧各国、アメリカでの比較研究の蓄積があるが、その他に、ポーランド、旧ユーゴ、ハンガリー、マルタ、イスラエル、トルコ、香港、インド等でも研究がみられることが把握しえた。近年、国際比較のための調整をふまえた比較研究が大きく進展しており、日本でも、国際比較の可能性を探り、比較研究を進めることが課題であると考えられる。 3、比較可能性のある職業別死亡統計について、調整可能なフィンランドのデータに関して、フィンランド統計局の協力を得て、死亡個票とセンサス・ミクロデータのリンケージによる再集計データを作成することができた。同データの一部を用いて日本との比較分析を行い、その結果をILO統計局の機関誌において発表した。
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