1、労災・職業病統計の国際比較の可能性 労災・職業病統計の比較可能性について国際的な研究動向を調査した結果、ILOの労災統計専門家会議での検討やEU各国の個票データの標準化による比較研究プロジェクトなどで検討が進められてきたことが把握できた。その結果、労災統計に関しては前進がみられるが、職業病統計については比較可能性が小さいことを確認しえた。 2、職業別死亡統計による標準化死亡比(SMR)の日本と北欧の比較 職業別死亡統計は、国際比較に利用可能性の高い統計であるが、北欧諸国の中で、フィンランド、デンマークのミクロデータ再集計によるデータを利用し、1981年〜90年の10年間における職業別の死因別SMRと日本の1990年のデータを比較した。その結果、循環器疾患のSMRでは3カ国とも運輸とサービス職で、悪性新生物ではサービス職が高い共通性を示した。しかし、従来の研究で健康水準が良好とされてきたホワイトカラー層に関して、循環器疾患ではデンマークで管理職と事務職が、日本で技術職が相対的高死亡傾向を示した。悪性新生物のSMRでは、デンマークで事務職、日本で技術職、事務職が高い傾向にあった。 3、職業別死亡統計による年齢別死亡比の日本と北欧の比較 年齢別の死亡比比較の結果、ホワイトカラー層において、循環器疾患では日本の技術職の各年齢層での高死亡、事務職の若中年層での高死亡、管理職の若年層での高死亡傾向が見出された。さらに悪性新生物では、これらの日本の特徴が一層明確になったが、デンマークでも、技術職、専門職、管理職、専務職、販売職の若年層において相対的高死亡傾向が確認された。これらの傾向は、従来の国際比較研究では指摘されていなかった特徴である。
|