研究概要 |
非定常時系列をさらに、ベクトル時系列に拡張すると、ベクトルの自己回帰が単位根を含む場合になるが、これは共和分(Co-integration)分析となり、単一変数よりも複雑になる。共和分分析は、簡単にはベクトルのなかに何個単位根が含まれるか、その場合の推定は如何に行われるべきであるかという問題である。他方、イギリスを中心に開発され、かつ発展してきた、自己回帰の誤差修正(Error Correction)モデルは「長期均衡」という概念を自己回帰式に導入して多くの実証的成果を挙げていた。そして現在は、この誤差修正モデルと共和分分析が相乗して、ますます理論的にも実証的にも関心が広がっているのである。 このような,非定常時系列分析において,ノンパラメトリックな推定法,および検定法を考え,様々な問題に応用してみた。しかし,結果はパラメトリックな場合と大きく変わっており,満足できる状況ではない。シミュレーションでは結果は尤もになるが,時系列でのノンパラメトリックな分析法は,困難である。単位根の検定にしろ,検出力は非常に低い。パラメトリック検定でさえ,通常の観測個数では検定の検出力が低い事が分かっているので,ノンパラメトリック法は実用性は持たないかもしれない。来より柔軟な推定ならびに検定の方法を用いているのが、経済学的に納得のいく結果は得られていない。ベクトル分析では,この傾向はより強く,現時点では,ノンパラメトリック法を考え直す必要がある。なお特記すべきこととして,2004年度日本統計学会賞を受賞した。
|