本研究は実証分析において近年、その利用頻度が高まっている、離散データの統計的分析に焦点をあてた研究である。整数のみをとるカウントデータを分析する代表的な手法としてはポアソン回帰モデルをあげることができる。しかしながら標準的なポアソン回帰モデルは、説明変数が外生的であるという強い仮定を必要としている。一方で複雑な経済活動をモデル化した場合、必ずしも説明変数に対する外生性の仮定を満足できないケースがある。質的選択といった経済主体の行動をモデル化する場合、選択を決定する変数が、各主体間の非均一性をあらわす確率変数と相関をもつことになる。したがってこのような場合、説明変数に対する外生性の仮定が満足されない。外生性の仮定が満足されない場合、モデル内のパラメータの推定にバイアスがもたらされ、その分析結果は誤ったものになる。 内生的な質的選択を説明変数にもつポアソン回帰モデルの推定法として、これまでに最尤推定法、二段階モーメント推定法、ウエイト付き非線形最小二乗推定法、の3つの推定法が提案されている。本研究ではバイアス、平均二乗誤差の点から、どの推定法がもっとも頑健であるかをモンテカルロ実験により明らかにした。その結果、データの分布の形状が分析上、仮定されている分布と同様な形状をしている場合、最尤推定法が他の推定量に比べて頑健であることが判明した。またこの研究成果は国際学会(International Congress on Modelling and Simulation)において報告された。 さらに本研究では、選択を表現する内生的二値変数を拡張し、2つ以上の順序カテゴリーを選択するためのモデルとして、内生的順序つきカテゴリー変数をもつポアソン回帰モデルを提案した。
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