1.決定係数は、通常最小自乗推定量に基づいて定義されるが、本研究では、回帰係数をStein型推定量で推定し、このStein型推定量に基づいて定義される決定係数を取り扱った。Stein型推定量に基づく決定係数のモーメントを表す公式を導出したが、モーメントを表す公式は複雑な形をしており、しかも未知母数に依存する。このように推定量や検定統計量のモーメントや分布が複雑な形をしており、しかも未知母数に依存するとき、その精度を評価することは困難である。しかし、Efron (1979)によって提唱されたブートストラップ法を使えば、精度の推定値を求めることができる。このことから、Stein型推定量に基づく決定係数の精度と信頼区間を、ブートストラップ法によって推定する方法を考察した。また、モンテカルロ実験によってブートストラップ法によって推定された精度の経験値を生成し、これを厳密な公式に基づく精度の値と比較することによってブートストラップ法は有効に機能していることを示した。 2.回帰係数の線形制約に対する予備検定を行い、その結果に従ってモデルが選択されるときの決定係数(予備検定後の決定係数)の小標本特性に関する分析を行った。この予備検定後の決定係数のモーメントを表す公式を導出し、予備検定後の決定係数と通常の決定係数のバイアスと平均自乗誤差を数値的に比較した。数値計算の結果は、予備検定後の決定係数のバイアスは通常の決定係数よりも小さいが、平均自乗誤差は予備検定の有意水準によってそのパフォーマンスが大きく変わることを示している。この予備検定後の決定係数の精度の推定値を求めるためのブートストラップ法の手順は、現在開発中である。 3.回帰モデルの誤差分散に対する予備検定推定量(縮小推定量)の厳密な分布を導出し、その小標本特性に関する研究を行った。この予備検定推定量の精度の推定値を求めるためのブートストラップ法の手順は、現在開発中である。
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