この研究課題のもとで、当該研究期間に以下の研究を行った。 1.1990年代以降の日本銀行の金融政策を展望し、フレームワークとしてのインフレターゲットへの積極的な検討が必要であることを指摘した。2.わが国の金融政策の政策反応関数を、GMM(一般化積率推定法)とレジームの変化を計測できるマルコフ・スイッチング・モデルにより推定した。この結果、株価の基調的変動は金融政策に影響するが、その一時的変動は影響しないことを発見した。3.金融政策の非対称的効果について、わが国を対象にLST-VAR (Logistic Smooth Transition VAR)モデルを使い、実証分析を行った、この結果、従来の金融政策には景気の低迷を克服するような顕著な効果は認められないことを明らかにした。4.1990年代以降のマクロ安定化政策としての財政政策を展望し、今後、財政の自動安定化装置の機能を強化する必要のあることを指摘した。5.わが国の政府支出を対象に財政の政策反応関数を推定し、そのレジームの変化を計測した。この結果、政策反応関数のレジームは、大きく分けると93年に変化した可能性が高く、92年までは景気要因に強く反応するが、それ以降は景気の影響が弱まり、財政赤字の増加に反応する傾向が明らかになった。6.わが国のデータを対象に、中央銀行と財攻当局を独立した目的を持つ主体と考え、両者による動学ゲームのもとで導出される均衡戦略を推定した。この結果、公的債務の安定化は主に財政当局によって追及され、金融政策はそれらを特に考慮することなく主体的に行われていた可能性が高い、ことが明らかにされた。
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