本研究では、日本の貿易相手国別・品目別の貿易指数データベースの開発実験を基礎として、これまで存在しなかった米国の貿易相手国別・品目別の貿易指数データベースを開発し、これらを用いてアジア通貨危機が、日本・米国・アジア間の貿易や経済構造にどのような影響を与えたかについて実物面から定量分析を行う。 97年7月のタイの通貨危機に端を発したアジアの経済危機とその後の回復動向に関しては、いくつかの角度から実証分析がなされている。しかし、問題の性格上、金融面からの分析は多方面から行われているが、貿易を通じた実物面からの分析は必ずしも十分でない。その一つの理由は、従来の実物面からの分析では、その基礎となっている貿易データが、多くの場合ドルもしくは各国通貨ベースの金額データで、数量ベースのデータが欠けているからである。特に、アジア通貨や円の対ドル為替レートが短時日の間に大きく変動した今回のような経済危機の場合には、輸出入の数量指数がどのような動きをしているかを実証的に捉える必要がある。本研究の最大の特徴は、貿易相手国別・品目別の貿易指数データベースを作成・利用することにより、日本ならびに米国の対アジア貿易に関する詳細な分析を行うことにある。 平成13年度には、既に開発した日本の貿易指数データベースのソフトウェアを米国の貿易データに合わせた仕様変更を行った。具体的には、原データを整理・加工するデータの前処理を行うプロセスと、検索されたデータに対して計算処理を行い、必要な貿易指数を算出するプロセスである。これらの仕様変更により米国データの処理を行うことが一応可能になった。しかし、米国貿易データは数量の欠損値が多く、年の途中で品目コードの変更を頻繁に行うなどデータ処理上、特有の難しさがあり、ソフトウェアの改善をさらに進め実用的な指数を算出することが、次年度の課題として残っている。
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