(1)芸術NPOの多様性の解明 サンパウロ、リオ・デ・ジャネイロ(ブラジル)の芸術NPO(非営利組織)・NGO(非政府組織)を実地に訪問して、法的基盤や経営等について調査した。そこでは芸術NPOにありがちな独善性を廃し、活動内容をわかりやすく人々に広報する努力を惜しまず、子供たちや青少年の教育にも力を注ぐ姿が浮き彫りにされた。また、横浜市が歴史的建築物の管理運営を芸術NPOへ委託することについて、日本NPO学会第6回大会でのパネル「社会変革の担い手としてのアートNPO」で座長を務めた。このように、ひとくちに芸術NPOといっても設立経緯・歴史・経営のあり方は国によって、また活動分野によって様々である。 (2)芸術NPOへの公的支援の現状と問題点の検討 サンパウロでの国際フィランソロピー会議に出席した。どの国も不況下の税収低迷により芸術NPOへの公的支援が減少傾向にある中、芸術NPOは聴衆獲得と資金獲得に困難を来しており、活動内容の市民や企業へのマーケティングやアウトリーチ活動が今後重要となることが明らかとなった。 (3)公益法人改革と芸術法人(仮称)創設の課題 現在、進められている公益法人改革では、NPO法人と財団・社団法人を統合して、届け出制による「非営利法人」を新設する動きがある。芸術NPOはその「非営利性」を強調するあまり、これまで「公益性」についての理解が乏しかった。今後は「公益性」概念の再構築により、芸術NPOの意義を再認識する必要がある。
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