本研究は、民間の芸術NPO(非営利組織)に焦点を当て、NPOと他の経営形態との相違点や特徴を探り、芸術NPOへの公的支援の問題点を明らかにし、芸術活動にとって望ましい法人格として芸術法人(仮称)の創設と公的支援の拡充を検討した。 チリ(2001年)、トルコ・韓国(2002年)、ブラジル(2003年)等現地のNPO・NGO(非政府組織)を実地に訪問して、芸術系NPO・NGOの法的基盤や経営等について調査した。その結果、ひとくちに芸術NPOといっても設立経緯・歴史・経営のあり方等は国によって、また活動分野によって様々ではあるものの、どのNPOも資金調達と聴衆獲得に苦労している姿が浮き彫りとなった。芸術NPOへの公的支援については、芸術組織を国や自治体が直接経営する西欧型と、税制優遇により間接的に支援するアメリカ型の2つのタイプがあるものの、景気低迷下、両者とも経営に苦労している。芸術法人の創設については、現在、すすめられている公益法人改革ではNPO法人と財団・社団法人を統合して、届け出制による「非営利法人」を新設する動きがある。これまでわが国の芸術NPOは、その「非営利性」を強調するあまり、「公益性」についての認識が乏しかった。今後は、「公益性」概念の再構築により、芸術活動にふさわしい法人格として芸術法人を創設するとともに、「社会変革の担い手としてのアートNPO」の意義を再認識する必要がある。 チリの国際NPOセミナーにおいて座長を務め(2001年)、韓国NGO学会に招聘され国際セミナーにて講演を行い(2002年)、日本NPO学会で国際シンポジウムに参加する(2002年)など、合わせて5回の学会発表を行った。また、苅谷剛彦編『創造的コミュニティのデザイン』有斐閣、等図書4冊や、「地域におけるNPOの役割と行政との連携」『月刊ESP』内閣府、等論文3本を刊行した
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