研究概要 |
本研究の目的は,経済システムの移行過程にあるアジア諸国における個人・世帯の行為様式の変容を,経済・社会変動にともなって新たに析出されつつある新しい下層・辺縁層--失業者,都市・農村の貧困層・出稼ぎ・離村農民など--に焦点を当てて,オリジナルなミクロデータにもとづいて分析することにある。2001(平成13)年度の研究経緯は以下のとおりである。(1)中国については,6省13都市約5,300世帯を対象とした都市世帯・出稼ぎ農民世帯調査のデータセットの整理と分析作業を進めた。分析の重点は,世帯所得分布,所得格差の決定要因,実質失業率の推計,失業・レイオフ者の経済状況と失業のメカニズム,出稼ぎ農民の求職ルートと出稼ぎ所得の決定要因,都市貧困率の推計と貧困世帯の経済状況などの実証分析に置かれた。分析結果の一部は,オックスフォード大学経済学部主催のワークショップ(2001年8月),佐藤の英文単著(2002年5月刊行予定)において発表済みまたは発表予定である。(2)西アジア・北アフリカについては,オリジナルな世帯調査の実施に向けて,エジプトおよびチュニジアにおいて予備調査および現地研究機関(エジプト政府人口移動・統計局,カイロアメリカン大学,カイロ大学,スース大学ほか)との共同研究打ち合わせを進めた。その結果,2002年度にエジプトの大カイロ首都圏およびチュニジア農村部において出稼ぎ世帯を対象とした世帯調査を実施する目処をつけるに至っている。
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