本研究の目的は、ネットワーク型産業の生産性分析の基本的枠組みを構築し、いくつかの産業において生産性を推計することである。本年度の目標は、前年度までの成果をまとめ、生産性分析のみにとどまらず研究の発展の方向を探ることである。 本年度に主に対象としたのは、ビデオゲーム産業・コンピュータによる情報処理・LPガス産業である。一般にネットワーク型のプラットホームを基盤としてサービスを提供するこれらの産業の分析では、単にハードウェアかソフトウェアを供給する産業の生産性を推計することにとどまっている。本研究では、各プラットホームの上で利用者ないしは消費者が、供給されるハードウェアおよびソフトウェアを用いて何らかのアウトプット・サービスを生成し消費するという、システムとしての生産性分析を行った。主な結果は以下の通りである。 第一に、分析のための理論モデルが作成された。個々の利用者・ユーザーはハードウェアというインフラストラクチャを購入し、その上で最適な数のソフトウェアを導入する。モデル分析によってこのシステムのアウトプットは、ソフトウェアの価格とソフトウェア及びハードウェアの設置購入量から推計できることが示される。この方法は、要素投入に対する派生需要から、生産活動の水準を求める方法であると解釈することもできる。 第二に、ビデオ・ゲーム産業及びコンピュータによる情報処理に対して、上記のシステムとしての生産性分析を適用し、全要素生産性成長率を推計した。この結果、ゲーム機やコンピュータ本体などのハードウェア生産の全要素生産性成長率の近年の推移とは異なった様相を示すことがわかった。システムとしての生産性成長率はハードウェアの生産性成長率より低い傾向がある。 第三に、近年非効率であると指摘の多いLPガス産業に分析が適用された。技術非効率水準をあわせて推計し、小売り事業者の価格設定行動との関係を分析した。
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