研究概要 |
1.多国籍企業は経営戦略の側面から論じられることが多く、その行動原理が理論的考察の対象になったのはそれ程昔ではない。一方国際的に行動する企業について、不完全競争を前提とした国際貿易や戦略的貿易政策などの枠組みで非常に多くの研究がなされてきたが、多国籍企業の投資戦略と技術戦略を同時に考察したモデルは少ない。そこで、技術開発を行う多国籍企業が対外投資や技術開発投資をどのように決定するのか、あるいは何が投資戦略を規定するのか、以下の論文で考察した。 (1)「多国籍企業の投資戦略-技術開発と直接投資」を、2004年7月に石井安憲編『開放経済の経済・攻策分析』早稲田大学現代政治経済研究所研究叢書20、3-27頁、早稲田大学出版部で発表した。また、2004年10月9日-10日に開催された日本国際経済学会第63回全国大会においても同論文を発表している。 (2)"Investment strategy for a multinational enterprise : R&D investment and foreign direct investment,"新潟大学Working Paper No.50は(1)の論文を発展させたものである。 2.情報が完全なら、依頼人は請負人への報酬を適切に決めて自らの目的を最大化することができる。しかし、両者の間に非対称情報があるとモラルハザードや逆選択が生じるため、均衡は次善となる。研究開発に伴うリスク、不確実性を反映させ、より効率的に研究開発を行うためにはどのような組織体系が望ましいのか、政府が寡占的な民間企業に研究を委託するケースで分析を試みた。
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