製造業ミクロデータを現地統計局より入手し、インドネシア、台湾、タイについて生産性向上のメカニズム、ならびに、直接投資の役割を実証的に探った。以下、その研究成果の要約である。 (1)インドネシア インドネシアの生産性向上のメカニズムは、既存工場の生産性向上というよりも生産性が高い工場の市場シェアの拡大、ならびに、高い生産性を誇る工場の参入または低い生産性工場の撤退によるものであることがわかった。つまり、生産性向上には新規企業の参入や既存企業の撤退を行いやすくする政策が不可欠である。一方、外資企業の生産性向上への貢献であるが、いくつかの産業を除いては大きくはなかった。インドネシアのような大国では地場系企業の育成も欠かせない。 (2)台湾、タイ インドネシアと同程度な詳細なデータの入手は台湾とタイでは困難であったが、分析に必要な最小限の変数を含んだ製造業のミクロデータの入手が可能であったため、直接投資が生産性向上にどのような貢献をもたらし得るかにしまって研究を行った。台湾については外資系企業の経済発展への貢献度がきわめて大きい。しかしながら、その貢献方法は時代によって変化している。初期の頃は、雇用創出や輸出拡大への貢献が主であったが、近年では、R&D投資を通じた生産性向上へと変化している。タイにおいても外資系企業の生産性向上への貢献が著しいが、同企業はバンコク周辺に集積しており、タイの地域間格差をさらに助長する傾向がある。今後のタイ政府の地域政策に重要な政策的インプリケーションが得られた。 上記に加え、市場経済化を目指しているベトナムについても、電子・電機産業にしまって外資系企業の生産性向上を含めた経済発展への貢献度を探った。民間企業が未熟かつ国営企業が非効率なベトナムでは、外資系企業が成長のエンジンそのものであることが明らかとなった。ベトナムにおける投資環境の整備が急がれる。
|