本研究は、国際レベルでの各国間の政策交渉ゲーム(国際通商交渉)と、国内レベルでの政策交渉ゲーム(国内政治)との2つのレベルでのゲームの相互依存関係について検討することを目的とする。特に本研究では、国内政治(国内政策交渉ゲーム)の動向が国際レベルでの政策交渉ゲームの結果にどのような影響を及ぼすのか、また国際レベルでの各国間の政策交渉ゲームを成功させるためには国内の政治状況にどのような条件が必要かという点について、国際通商交渉や自由貿易協定を具体的に取り上げながら分析する。 本年度は、国際通商交渉と制裁の威嚇および国内政治との関係について理論的に検討するとともに、関連する分野で優れた業績をあげつつある研究者との交流を行った。今年度実施した研究はおもにつぎの2つである。 第1に、国際通商交渉と制裁の威嚇および国内政治との関係について理論的に検討した。その結果明らかになったのはつぎの点である。外国政府の制裁の威嚇が国際通商交渉の結果に及ぼす影響は、貿易自由化に対する自国の政府と議会(国内構成員)の政策選好の乖離度に依存して異なるということである。この点については日米自動車・同部品交渉の事例を取り上げ、実証的にも確認作業を行った。 第2に、国際通商交渉と国内政治との関係について検討を行うために、東京大学助教授石田淳氏や神戸大学大学院経済学研究科の院生に参加していただき、昨年に続き第3回目の「国際政治経済ワークショップ」を2003年9月に神戸大学で開催した。このワークショップでは、5つの報告の後、参加者との間で有益な意見交換をもつことができた。
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