(1)研究課題 本研究は、国際レベルでの各国間の政策交渉ゲーム(国際通商交渉)と、国内レベルでの政策交渉ゲーム(国内政治)との2つのレベルでのゲームの相互依存関係について検討した。特に、国内政治(国内政策交渉ゲーム)の動向が国際レベルでの政策交渉ゲームの結果に及ぼす影響について明らかにした。 (2)研究成果 ●研究成果1 本研究では、政治的圧力と交渉結果に関して、以下の点を明らかにした。第1に、政府と議会の選好が十分に近似している場合には、貿易自由化の反対派の自国政府に対する政治的圧力は、自国の貿易障壁を上昇させ、外国の貿易障壁も上昇させる。しかし、自国議会に対する政治的圧力は、自国の貿易障壁を上昇させるが、外国の貿易障壁を低下させる。 第2に、政府と議会の選好が適度に乖離している場合には、交渉結果は自国政府の選好に規定され、自国議会への政治的圧力は交渉結果には影響しない。貿易自由化の反対派の自国政府に対する政治的圧力は、自国の貿易障壁を上昇させるが、外国の貿易障壁を変化させない。 第3に、政府と議会の選好が十分に乖離している場合には、交渉結果は自国議会の選好に規定され、自国政府への政治的圧力は交渉結果には影響しない。貿易自由化の反対派の自国議会に対する政治的圧力は、自国の貿易障壁を上昇させるが、外国の貿易障壁を変化させない。 ●研究成果2 本研究では、外国政府による制裁の威嚇と通商交渉の結果に関して、以下の点を明らかにした。外国政府による制裁の威嚇は、貿易自由化に対する自国の政府と国内構成員(議会)の選好の乖離度に依存して異なる。第1に、外国政府による制裁は、自国の政府と国内構成員議会)の選好が十分に近似している場合には、自国の通商障壁を低下させ、外国の通商障壁を上昇させる。第2に、自国の政府と国内構成員(議会)の選好が適度に乖離している場合には、通商交渉の結果に影響を及ぼさない。第3に、自国の政府と国内構成員(議会)の選好が十分に乖離している場合には、自国の通商障壁を低下させるが、外国の通商障壁には影響を及ぼさない。
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