輸入競争が国内の雇用に与える影響について、計量的に実証分析を行うべく、データの収集・整理、計量分析、今後に残された課題の検討等を中心に行った。 まず、研究成果については、国際的な学術雑誌に掲載された論文において、次のようなことが明らかにされた。 (1)輸入競争が国内の雇用に与える影響は、従来は日本では無視し得る程度と考えられていたが、産業区分を4桁レベルで詳細に分けると、近年においては、有意になってきていること、 (2)輸入競争が国内の雇用に与える影響は、日本においては、米国とは対照的に、大陸欧州とは類似して、既に雇用されている従業員の解雇(雇用喪失の増大)という形態よりも、今後生じたであろう雇用創出機会の抑制というかたちであらわれていること、 (3)輸入競争が国内の雇用に与える影響は、中間投入財を供給する関連産業や人材の集積が豊かな地域(県)においては相対的に緩やかであること。 いずれも、産業レベルで中間財を輸入において明示的に区別しない分析にとどまったものの、従来の分析では明らかにされていなかった輸入浸透の日本産業への影響を実証的に定量化したものである。 今回の研究のために収集されたデータのうちで、特に、部品の輸入数量指数については、独自の分類照合に基づくもので貴重であり、今後の関連研究に参照され得るものであることから、冊子体報告書に収録した。 今後の研究に残された課題としては、今回の研究で構築された部品データを本格的に活用した分析、中間財貿易と密接に関連した生産工程の国際的分割立地や国境をまたぐアウトソーシングに関する分析が必要である。
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