研究概要 |
本年度の研究課題は、ラテンアメリカにおける政策改革に関し、とくにアルゼンチンとチリの比較研究の観点から、金融システム、通貨危機、地域経済統合、マクロ政策、民営化などに焦点を当て、政策改革の功罪について研究することであった。これらの成果は、『ラテンアメリカにおける政策改革の研究』(神戸大学経済経営研究所研究叢書No.62,426頁)としてまとめられた。アルゼンチンに関しては、2002年1月の通貨危機に焦点を当て、急激な資本流入に対して、金融システム、労働改革などの制度における改革が不十分なことが、通貨危機の遠因となったことを議論した。また、チリに関しては、早い段階からの政策改革が制度的な面での改善をもたらし、通貨危機への抵抗力を有していたことを明らかにしている。今後は、これらの研究に基づき、第二世代の政策改革の役割について研究を進める。 今ひとつの本年度の研究成果として、ラテンアメリカにおける多様な地域経済統合に関して、政策改革の観点からいくつかの論文を発表している。代表的には、Hosono, Akio and Shoji Nishijima, "Regional Integration in Asia and Latin America", Peter Drysdale and Kenichi Ishigaki (eds.), Esat Asian Trade and Financial Integration : New Issues, Asia Pacific Press at The Australian National University, 2002で、自由貿易協定などが政策改革を補完するものであることを議論した。 なお、当初研究対象として計画していたブラジルに関しては、通貨危機が発生したアルゼンチンに研究の比重がシフトしたため、十分に研究ができなかった。このため、新しい政権下のブラジルという観点からも、本研究プロジェクトの3年目の課題として、今後はブラジルの問題に焦点を当てたい。
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