グローバリゼーションの進展とともに、ラテンアメリカ諸国は政府介入から経済自由主義(ネオリベラリズム)へと転換し、多くの諸国で市場メカニズムを追及する政策改革を実施した。だが、急激な経済自由化は必ずしも望ましい成果をもたらしたとは言えず、雇用、貧困、通貨危機などの経済的、社会的不安定性を高めている。したがって、経済自由化を望ましい形で推進するために市場を補完し社会的公正を実現する新たな政府の役割が問われており、そのための「第二世代の政策改革」が不可避となっている。 本研究プロジェクトは、ラテンアメリカではいかなる第二世代改革が実施されており、どのような問題があったのか、政府改革への政府自身のインセンティブはいかに生じるか、第二世代の政策改革に対し民主主義の進展など政治的要因はいかに関わるのか、などの基本的な問題に関し、経済学、政治学、国際関係論の立場から分析を実施した。 平成13年度から平成14年度にかけては、以上の研究課題に関し、分担者による各国(ブラジル、アルゼンチン、チリ)についての詳しい実証分析を実施した。その成果は、『ラテンアメリカにおける政策改革の研究』(細野昭雄と共編著)神戸大学経済経営研究所研究叢書No.62、2003年3月、426頁に結実した。 しかし、平成15年度からは研究分担者である細野教授が急遽エルサルバドル大使に転出したため、平成15年度はアルゼンチンに研究を特化し、第二世代の政策改革を要請する一つの重要な要素である通貨危機の問題と労働運動の問題を、西島と松下で分担して研究を実施した。結論的には、通貨危機を防ぐには適切なマクロ政策と制度的な構築が不可欠であること、また適切な労働関係を構築するための政治的体制が重要である、こうした問題を第二世代改革で実現する必要があることが明らかとなった。
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