研究概要 |
本研究は、日本の物流業がロジスティクス対応からサプライチェーン対応に移るプロセスにおいて、どのようなグローバル競争を展開しているのかを、主としてアジア物流に注目しつつ、実証的に論じたものである。その意味で本研究の主たる視点は物流業の行動分析にあり、その中で日本の物流業がどのようなグローバル優位を達成しているのか、という課題に迫ろうとしているのである。 そこで、第2世代ロジスティクスにおいて中程度に効率的な段階にあるアジア立地企業の対米物流構造の分析を通じて、日本企業のアジアにおけるロジスティクス戦略拠点の構築にどの程度のグローバル整合性が認められるのかを、アジア諸国の企業行動と比較対照して明らかにしている。とりわけ自動車・繊維・家電の3業種の物流にスポットを当てたこの分析結果、日本企業のロジスティクス戦略拠点のグローバル拠点性がかなり高く、さらにその拠点構築の目的がトータル・ロジスティクス・コスト最小よりもロジスティクス・ネットワークの効率性重視に向かっている状況を確認でしている。それは、企業間物流をも含めて、大きな流れが第3世代ロジスティクスの展開の前提となるSCMに向かっているという事態を裏付けていると見られる。 他方において、香港とシンガポールにおける物流と港湾の実態調査を踏まえて、日本の拠点港湾,とりわけ西日本に位置する神戸港と大阪港が、1986〜95年の間に、アジアの9カ国との物流に対して採っていた行動メカニズムを解明して、今後の物流改革のベースとして、輸出コンテナ貨物の拠点港湾の開発とは、港湾の背後地域を完全に包含する規模を持った大規模港湾の一体的開発を指すものでなければならない、との認識を明らかにしている。 これらを踏まえて本研究の分析の枠組みを、「市場支配とコスト削減による伝統的戦略」と「SCMに対応する新規サービスの創出戦略」、という2面に求め、アジア、北米、EUの物流ネットワークのダイナミックな変動と物流業のグローバル戦略をプロダクトサイクルの視点より実証的に解明することが可能であることを明らかにした。
|